不協和音 Ⅰ

地元の後輩ジョングクを好きだったジミンがある日信号待ちしてる間に反対車線で同じく信号待っているジョングクを見つけ話しかけようとするが隣にはあまりにも整った綺麗な顔をした人がいた。なんとその人は自分の親友であった。会えば会うほどジミンの魅力にのめり込むジョングクと焦りと悲しみの感情を抑え切れずにメンヘラと化していく恋人のテヒョン。運命によって掻き乱される三角関係のお話。/ jkjm

 

その日は突然やってきた。

みんなで海行こうぜなんて大学の先輩後輩関係なく仲の良いメンバーが集まって海へバーベキューをしに行くことになった。もちろんその中にはジョングクもテヒョンもいた。

 

2人は付き合って何年目になるのだろうか。あの日、あの場所で、横断歩道越しに君を見つけたあの瞬間まで、本当に僕は何も知らなかった。大学ではすっかり有名な公認カップルらしい。肉を焼いている時も海に入っている時もビーチバレーの時すらもジョングクにべったりなテヒョン。「ソーセージが食べたい」と言われれば、ちゃんとふーふーと冷ましてからあーんと食べさせてあげる甘い姿も、子供のように海まで走って行っては躓いて騒ぐ姿を見て、クスッと笑って「ほら、言わんこっちゃない」何て言いながら手のひらと膝についた砂を払ってあげる優しい姿も、お互いチームはバラバラになったくせにテヒョナがなるべく打ち返しやすいように優しいボールを打ってあげる過保護な姿もぜんぶぜんぶ僕には見えている。テヒョンだけがべったりひっついてる様に見えて、実際はちゃんと相思相愛である所までしっかりと見えている。

 

そして「俺も恋人にあーんして貰いたいんだけどなぁ?」「今日もイチャイチャだなお前ら〜〜」「おい!ジョングク!!テヒョンにあげるボールだけ明らかに速度遅すぎんだろ〜!」なんて周りからの茶化しや煽りは結局テヒョンには敵わないんだから速やかに諦めろと僕に言っているようだ。

 

その仲間の中に最年長のジンさんという誰が見てもハンサムな大学OBの方と、今4年の無愛想でツンデレなユンギさんのカップルもいる。2人はどう見ても付き合ってるように見えないしユンギさんって男っ気強くて厳しくて冷たくて恋愛する雰囲気なんて全く感じないけどジンさん曰く家に帰ったらほんとたまーに裸エプロンしてくれるらしい。人は見かけによらない。そんな余談はさて置き。

 

僕にとっては2人が隣同士座っているだけで心臓がぎゅって掴まれた様に辛いのに、周りがみんな海行ってしまってたまたま僕ら3人だけがテントの中に残った事があった。大ピンチである。お互い気を遣いながら少しは3人仲良く話せるかな、なんて思っていたのが間違いだった様だ。

 

まるで僕は空気かのような扱いでずっとジョングクの膝の間に入り込み甘えてるテヒョンの姿を見て僕のメンタルは崩壊寸前だった。途中、外から「おーい!お前らも海行かねぇのかー?」と大きな声聞こえたがテヒョンがテントの中から顔だけをちょこっと出して「そっちこそしばらくこっち帰ってこないでね」なんてわざと周りを煽るような事を言うからテントの外がガヤガヤと騒がしくなり「海で中出しはアウトだから〜〜〜」なんて言う奴もいた。本当に勘弁して欲しい。

 

正直テヒョンにはそう言うところがある。わざとらしい可愛さというかなんというか。言うならば小中学生の頃クラスにひとりは思春期の男子の心を惑わすような少し小悪魔っぽい事を言う子がいただろう。まさにそれである。ジョングクはそのぶりっ子さに騙されているのではないか?とすら思ってしまう。ここ最近僕に対してだけ敵意むき出しな性格の悪い女子の様な態度をとってくることすらある。それが何故なのかは僕が1番良く分かっている。

 

居てもたってもいられなくなって、「ちょっとトイレ行ってくる」なんて適当に嘘を言ってテントから出た。仲間に混ざろうかとも思ったが、海遊びもそろそろ飽きていたので用を済ませた後再びテントへ戻ったが、なにやらテントの中から聞こえる声。耳をすましてよく聞くと「ねぇぐく。ちゅうして?」

 

これもわざとだろう。僕が帰ってくる足音を見計らってこんな事を言ったのだ。中からちゅっちゅっとリップ音が聞こえる。ああ、今絶対した。僕の絶望を他所に

 

「こんなのじゃやだぁ!もっとも〜っとあまぁいのがいい〜!」

 

と甘ったるい声で猫のように彼に擦り寄る姿が先程自分がテントから出た際に作った出口の小さな隙間から見える。なぜ自分はこんなにツメが甘いのか。

 

彼の首に腕を巻きつけて、股間のギリギリまで身体を密着させながら妖艶に誘惑している。なんなら少し擦り付けているようにも見える。ちょっと間があいてジョングクがテヒョンの唇見定めたのわかった。目がいつものテヒョンを見る優しいジョングクの目ではなく、ライオンのような獲物を捕らえるものに変わったからだ。瞬時に逃げようと判断した。しかし恋とは辛いものである。自分の好きな人が愛を伝え合う行為を直接見るのは想像よりも遥か大きく僕にダメージを与え、足がすくんで逃げられなかった。結局どエロいディープキス見せつけられて撃沈したのだった。

 

程なくして、テヒョンのことを大事そうに抱き寄せながら押し倒して身体中にちゅうちゅうと湿った唇を吸い付ける姿を見た。僕の心は泣いていた。ああ、一体何度目の失恋だろうか。中から聞こえる甘ったるい「ぐくだぁいすき」と言う声。そしてその声の持ち主と目があったその瞬間僕の身体は飛び跳ねた。いかにもお前の好きな人は僕の恋人。でもって今は僕の身体中にたくさんちゅうしてくれてるの。見える?見えてる?もっと近くで見せよっか?なんて僕を嘲笑っている様だった。

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